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毎日ブログ

2026/01/12
786/1000 入るを量りて、出ずるを制す   

パーソナルトレーニング6ヶ月コースが、いよいよ最終月に入った。

体重は約3kg減。

ウエストは4cm減。

数字だけを見れば、劇的な変化ではないかもしれない。

でも私にとっては、十分に現実的で、十分に嬉しい変化だ。

スーツのウエストが少し楽で、

階段を上ったときの息が少し軽い。

この「少し」が、日常の中では案外大きい。

この6ヶ月で手に入れた一番の成果は、

実は体重でも、筋肉でもない。

何を食べてはいけないかを知った。

何を食べると調子がいいか。

何を食べると眠くなるか。

何を食べると、翌朝むくむか。

何を食べると、体が重くなるか。

正解のメニューを覚えたというより、

「自分に合わないもの」が、体で分かるようになった。

これはたぶん、一生使える感覚だ。

正直、このコースが終わったらどうなるんだろう、という不安はある。

トレーナーがいなくなり、

予約がなくなり、

「行かなきゃ」が消えたとき。

人は簡単に元に戻る。

それを私は、仕事でも、暮らしでも、何度も見てきた。

そんなことを考えていたとき、ふと思い出した言葉がある。

「入るを量りて、出ずるを制す」

細井平洲の言葉だ。

最初に、場を量る。

状況を量る。

自分の立ち位置を量る。

そのうえで、

どこに着地するかを決める。

どう終えるかを定める。

経営でも、会でも、文章でも、

入り方が決まれば、出口は半分決まる。

この6ヶ月を振り返ってみると、

私はずっと「入るを量る」時間を過ごしていたのかもしれない。

自分の体は、何に反応するのか。

何を入れると、どうなるのか。

どんな生活リズムなら、続くのか。

無理をしたかと言えば、していない。

気合で乗り切ったかと言えば、たぶん違う。

ただ、淡々と量っていた。

どうやら私は、

一気に変わるのは得意ではないけれど、

コツコツ続けることは、案外できるらしい。

派手な目標は立てない。

気合も長くは続かない。

その代わり、決めたことを、静かにやる。

振り返ると、

続いているものがあり、

そばに残っているものがあり、

体もまた、静かに変わっていた。

正直、筋肉をこのまま維持するのは難しいと思う。

多少は落ちるし、サボる日も出てくる。

でも、

全部失う感じはしていない。

なぜなら私はもう、

戻り方を知っていて、

太り方も知ってしまっていて、

そして何より、

何を食べてはいけないかを知っているからだ。

パーソナルトレーニングが終わるというより、

管理される期間が終わって、

自分で選ぶ期間に入る。

6ヶ月かけて「入り」を量った。

これからは、自分で「出口」をつくっていく。

どんな生き方をしたいのか。

そして、それを支える身体はどうありたいのか。

その「出口」から逆算して、いまの入りを量る。

これは、身体の経営学なのかもしれない。


2026/01/10
784/1000 オゾンは時間のにおい   

事務所でコピー機が印刷を始めると、いつも少しだけ空気が変わる。ツンとした、金属のようなにおい。ある朝ふと思った。あ、これ……うちの現場で使っているオゾン脱臭機と同じにおいだ。

私の仕事は、においと向き合う場面が多い。家財整理の現場。長く閉ざされていた家。水害のあとの部屋。そういう場所で、私たちはオゾン脱臭機を回す。しばらくすると、あの独特のにおいが空間に立ち始める。「効いてきたな」という合図のようなにおい。

消臭作業をしていると、オゾンは時を加速させる魔法のようだと感じる。それは、長い時間をかけて自然界がやっていることを、ほんの数時間に縮めてしまう仕事だからだ。風が通い、光が入り、微生物が働き、季節をまたいで薄れていくはずのにおい。それを、オゾンは一気に引き寄せる。

この仕事には、はっきりとした季節がある。冬はほとんど出番がない。消臭作業のオフシーズン。本番は5月から10月。湿気が出て、温度が上がり、家も空気もにおいを溜め込みはじめる頃。私たちの出番も、そこから一気に増えていく。

現場で脱臭機を回していると、においが消えていくのと同時に、その場所の「時間」が進んでいく感じがする。昨日まで確かにあった痕跡が、今日にはもう輪郭を失っている。私はときどき、片づけをしているのか、時間を動かしているのか、分からなくなる。

調べてみると、コピー機も印刷の過程で微量のオゾンを発生させているらしい。なるほど、と思った。事務所で嗅いだあのにおいは、現場で何度も嗅いできたにおいだった。

コピー機と脱臭機。

役目は違うのに、

あのにおいだけは、どちらにも立つ。

事務所でそれを嗅ぐと、

私は少しだけ、現場の時間を思い出す。

においが変わるとき、

何かが終わっている。

そしてたぶん、何かが始まっている。

2026/01/08
782/1000 「新しい」が始まるとき   

新しいことを始めるとき、

それはだいたい「準備万端」の瞬間ではない。

まだ早い気もするし、

本当に必要なのかも分からない。

今のままでも、たぶん回る。

そんな地点で、えいっと踏み出す。

だから「新しい」が始まるときには、

いつも思い切りがいる。

ただ最近は、そのきっかけのほとんどが

「必要に迫られて」だ。

環境が変わり、

人が育ち、

やり方に歪みが出始める。

思えば今は、

父の時代から、私の時代に変わる時なのだ。

やり方も、判断も、背負い方も。

受け継いできたものを胸に収め、

今度は自分の足で立つ段階。

準備ができたから立つのではなく、

立たされた場所で、覚えていく。

そんな感覚に近い。

そんなことを考えていると、

家に帰って、息子が言う。

学校の音楽クラブで

何か演奏するんだとか。

歌か、ピアノか、ギターか。

ベースでもいいらしい。

じゃあベースやったら。

息子は笑顔で頷いた。

私から息子への時代は、

もう少し先のようだ。


2026/01/06
780/1000 ジャコウネコの悲劇   

コーヒーは苦手でも、コーヒーの香りは好きだという人は多い。

飲むとなると身構えてしまうのに、香りだけは不思議と受け入れられる。そこには味覚よりも先に、記憶や感情に触れる何かがある。

ジャコウネコのコーヒーの話を思い出す。

もともとは、野生のジャコウネコが完熟した実だけを選び、偶然生まれた希少なものだった。それが「価値がある」と分かった瞬間、効率化され、量産され、物語だけが残った。店頭に並ぶそれらは高価だが、どこかブロイラー的で、香りが薄い。

効率が進んだとき、真っ先に失われるのは、たいてい“香り”なのだと思う。

これは、コーヒーの話だけではない。

ブランドという色眼鏡に、私たちはいつの間にか魔法をかけられている。値段や名前が、安心や正解を保証してくれる。自分の感覚で確かめる前に、「これは良いものだ」と思わせてくれる。

けれど、本当に良いものは、そんな魔法がなくても、静かに伝わってくる。派手ではないし、説明もいらない。ただ、「これは好きだ」と自分の中で分かる。

しかし、私は実は、ブランドに弱い。

それでも、毎朝ハンドドリップで淹れるコーヒーは、スーパーで買った安い豆だ。

けれど、これがとても美味い。

今年は、

「ブランドマインドセットを捨てる」

というのを、自分のテーマにしてみようと思っている。


2026/01/04
778/1000 探すを楽しむ新しい時代   

正月ということもあって、ネットフリックス三昧。友人に勧められた『葬送のフリーレン』を観始めた。

剣と魔法の世界。

勇者が魔王を倒し、世界は救われ、物語は終わる。

本来なら、そこで拍手をして幕が下りるはずだ。

けれど、この物語はそこから始まる。

エルフである主人公のフリーレンにとって、人の一生はあまりに短い。

十年一緒に旅をした仲間との時間も、彼女にとってはちょっとした出来事にすぎない。

だから当初、別れの重みも、後悔の輪郭も、はっきりとは掴めなかった。

一方で、人は変わる。

歳を重ね、立場が変わり、価値観が更新されていく。

変化の速さの中で、置いていかれたり、追いつこうと焦ったりしながら生きている。

フリーレンは、その速さに合わせようとしない。

代わりに、ゆっくりと歩き続ける。

そして言う。「遅すぎることはない」と。

この言葉が、不思議と胸に残った。

僕らの世代は、「何者かになりなさい」と強く言われて育ってきた。

結果を出すこと、役に立つこと、評価されること。

それが正解で、それ以外は遠回りのように感じていた。

けれど振り返ってみると、

与えられた評価や肩書きは、いつの間にか色褪せている。

手に入れたはずの「答え」は、次の瞬間には別の問いに上書きされていく。

フリーレンが教えてくれるのは、まったく別の価値観だ。

本当に欲しいモノとは、誰かから与えられるものではない。

それは、探し求めている時間そのものなのだと。

寄り道をし、立ち止まり、無駄に見えることを繰り返す。

探している最中は、不安もあるし、確信もない。

けれど、その時間だけは、後から奪われることがない。

何者かになれなかったとしても、

探し続けた時間は、確かにそこに残る。

それは誰かと比べるものでも、評価されるものでもない。

ただ、自分の人生の厚みとして積み重なっていく。

平和な時代のヒーローは、剣を振るわない。

世界を救うよりも、記憶を拾い、感情を学び、時間を抱えて歩く。

その姿は、派手ではないけれど、とても誠実だ。

「探すを楽しむ」がこの作品のテーマであり、今の時代のテーマなのかもしれない。
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