846/1000 山を越えて行け
今日は末の娘の中学校の卒業式。
これで、私たちが中学校に来ることももうないのだと思うと、少し不思議な気持ちになる。
兄弟合わせて、およそ10年。
入学式、運動会、三者面談、部活の送迎。
思えばずいぶん長い時間、この学校に通ったものだ。
この中学校は、田んぼの真ん中にある。
3階の窓から眺める庄内の田園風景は圧巻だった。
秋になれば稲穂が揺れ、
その向こうには高く聳える雲。
あの雲の高さと、庄内の空の広さは、今でも忘れられない。
しかし、そこに通っていた子どもたちにとっては、
きっとそれが当たり前の景色だったのだろう。
大人になって遠くへ行ったとき、
「あの中学校は、実は特別な場所だった」と気づく日が来るのかもしれない。
卒業式のあと、最後のホームルーム。
担任の先生が、生徒たちに歌をプレゼントしてくださった。
映画『サウンド・オブ・ミュージック』より
「山を越えて行け」。
先生は声楽をされているそうで、
教室いっぱいに響く歌声は見事だった。
その真剣さに、男子生徒の何人かは照れくさそうに笑っていた。
けれど、娘はまっすぐ前を向き、
じっと先生の歌を聴いていた。
その後ろ姿を見ながら、
ああ、いい子に育ったな。
そんなことを思った。
家に帰ってから、久しぶりに映画を見直した。
子どもたちは、これからそれぞれの山を越えていく。
そして親は、その背中を見送る。
兄弟合わせて10年通った中学校。
もうここに来ることはないけれど、
田んぼの真ん中の校舎と、
あの高い雲の空は、きっとずっと心に残る。

