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840/1000 雛人形と、少しざわつく気持ち 

840/1000 雛人形と、少しざわつく気持ち 

ひな祭りも終わり、実家の七段飾りも母が早々に片付けていた。

子どもたちが小さかった頃は、私が説明書を見ながら

「あれ、これはどこだ?」

「この人形は三人官女だっけ?」

などと、ああでもないこうでもないと言いながら飾っていたものだ。

最近では飾るのも仕舞うのも母任せ。

一番重たいスチール製の台座だけは、父が納戸から運び出す役目らしい。

少し申し訳ないなと思いながら、昨日実家の様子を見に行くと、今年から収納場所を変えたという。

これまでは二階の納戸にしまっていたが、これからは毎年飾る座敷の押入れに入れることにしたそうだ。

そこには来客用の布団が入っていたのだが、その布団を納戸へ移動させた。

理由は単純で、

「来客用の布団は、雛人形より出番が少ないから」

だという。

なるほど、それは名案だ。

それでも七段飾りを毎年きちんと飾ってくれるのはありがたい。

二十数年前にいただいた雛飾りだが、いま見ても新品と変わらないように見える。

ただ、仕事柄、少し複雑な気持ちになることもある。

この年代の雛飾りが、ときどき廃棄物として排出されることがあるからだ。

事情はいろいろある。

家が狭くなったり、飾る人がいなくなったり。

私たちは供養をしてから処分するのだけれど、

それでも、段ボールに収まった人形たちを見ると、

胸の奥が少しだけざわざわする。

人形は物だ。

けれど、そこには確かに誰かの時間が詰まっている。

だからだろうか。

実家でまた来年も飾られる雛人形を見ると、

どこかほっとするのである。