気持ちの切り替えというのは簡単ではない。
失敗した時はもちろん、腹が立った時や嫌なことがあった時も、私たちの心はその出来事に縛られてしまう。
一度噛んだアナウンサーが続けて噛んでしまうことがあるという。
気持ちが乱れたというより、心の矢印が「今伝えること」ではなく、「失敗した自分」に向いてしまうからなのかもしれない。
これは私たちの日常でも同じだ。
失敗をした時は、
「なぜあんなことをしたのだろう」
「もっと上手くできたはずだ」
と考える。
腹が立った時は、
「なぜあんな言い方をするのだろう」
「自分は悪くない」
「相手が間違っている」
と考える。
不安な時は、
「もし失敗したらどうしよう」
「どう思われるだろう」
と考える。
どれも違う感情のように見えるが、共通していることが一つある。
心の矢印が自分に向いているということだ。
だから失敗を挽回しようとして空回りする。
だから余計なことを言ってしまう。
だから相手を責め続けてしまう。
気持ちの切り替えで大切なのは、まずその状態に気づくことだと思う。
今、自分は引きずっているな。
今、自分は腹を立てているな。
今、自分は心の矢印が自分に向いているな。
まるで鏡を見るように、自分自身を少し離れたところから眺めてみる。
そしてもう一つ大切なのが、「今ここ」を意識することだ。
過去は変えられない。
未来もまだ存在しない。
あるのは今この瞬間だけである。
目の前の仕事に集中する。
目の前の人の話を聞く。
次の一手を丁寧に打つ。
そうやって心の矢印を「今ここ」へ向け直していく。
すると不思議なことに、気持ちは少しずつ整理されていく。
気持ちの切り替えとは、感情を無理に変えることではない。
自分の状態に気づき、心の矢印を「今ここ」へ向け直すこと。
きっと、そういうことなのだと思う。