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936/1000 心の矢印 

936/1000 心の矢印 

気持ちの切り替えというのは簡単ではない。

失敗した時はもちろん、腹が立った時や嫌なことがあった時も、私たちの心はその出来事に縛られてしまう。

一度噛んだアナウンサーが続けて噛んでしまうことがあるという。

気持ちが乱れたというより、心の矢印が「今伝えること」ではなく、「失敗した自分」に向いてしまうからなのかもしれない。

これは私たちの日常でも同じだ。

失敗をした時は、

「なぜあんなことをしたのだろう」

「もっと上手くできたはずだ」

と考える。

腹が立った時は、

「なぜあんな言い方をするのだろう」

「自分は悪くない」

「相手が間違っている」

と考える。

不安な時は、

「もし失敗したらどうしよう」

「どう思われるだろう」

と考える。

どれも違う感情のように見えるが、共通していることが一つある。

心の矢印が自分に向いているということだ。

だから失敗を挽回しようとして空回りする。

だから余計なことを言ってしまう。

だから相手を責め続けてしまう。

気持ちの切り替えで大切なのは、まずその状態に気づくことだと思う。

今、自分は引きずっているな。

今、自分は腹を立てているな。

今、自分は心の矢印が自分に向いているな。

まるで鏡を見るように、自分自身を少し離れたところから眺めてみる。

そしてもう一つ大切なのが、「今ここ」を意識することだ。

過去は変えられない。

未来もまだ存在しない。

あるのは今この瞬間だけである。

目の前の仕事に集中する。

目の前の人の話を聞く。

次の一手を丁寧に打つ。

そうやって心の矢印を「今ここ」へ向け直していく。

すると不思議なことに、気持ちは少しずつ整理されていく。

気持ちの切り替えとは、感情を無理に変えることではない。

自分の状態に気づき、心の矢印を「今ここ」へ向け直すこと。

きっと、そういうことなのだと思う。