昔よく耳にした言葉がある。
「中小企業とおできは大きくなると潰れる」
「中小企業と屏風は広げすぎると倒れる」この格言、
昭和の経営者たちは、身をもって“戒め”としていたのだと思う。
けれど、最近こういった話を耳にすることがめっきり減った。
言う人がいなくなったというより、
私たちが耳を貸さなくなったのかもしれない。
いまの世の中は、拡大や成長という言葉が飛び交う。
だが本来、「拡大」は数字の話で、「成長」は人の話だ。
売上を増やすのは拡大。人が育つのは成長。
人の成長を伴わない拡大は、筋肉よりも先に骨を大きくするようなもの。
形は立派でも、いつか体がもたない。
そこに拍車をかけているのが新規事業に対する補助金の存在だ。
挑戦を後押しする仕組みとしては素晴らしい。
だが、いつの間にか「新規事業=やるべきこと」という目的不明確な歪んだビジョンに踊らされていないだろうか。
実際に、事業再構築補助金を活用した企業では、補助を受けた後に「製品・サービスを1つ以上販売・提供している(事業化段階3以上)」という状況に至った企業が約 59% にのぼるという報告がある。しかし、「利益を出している(収益化している)企業」は約 14% 。
つまり“始めること”はできていても、“続けて結果を出すこと”にはまだ大きな壁がある。
売上至上主義、社長のメンツ、そしてそんなメンコ合戦とも言える幻想に付き合わされる社員たち。
目的を見失った拡大は、
やがて誰かの疲弊を代償として成り立つ。
会社を広げることより、
中にいる人たちが豊かになることを大切にしたい。
“拡大”よりも“成長”を。
“広げる”よりも“深める”を。
時代は変われど、この格言が語る本質は、
今こそ、もう一度見つめ直す価値がある。
日曜日の午後、車の窓から妻が珍しくカメラを構えた。
田んぼの向こう、海から流れてくる雲に太陽が遮られ、その隙間から光が強く差し込んでいる。
「すごいね」
助手席のその声が、いつもより弾んでいた。
最近は休みも仕事をしに会社に行ってしまう。
気づけば三連休もほとんど会社。
新しいプロジェクトのことを考えていると、時間がいくらあっても足りない。
そんな日々の中で、妻を誘って羽黒の「つむぎ」さんへ出かけた。
先日のセミナーでご一緒したご縁もあって、ずっと気になっていたお店だ。
三種のお汁が自慢というお蕎麦は、聞いていた通り、香りも余韻も見事だった。
食後は、ハシゴでお茶。甘いものを少し。
そのあとスーパーや無印、ドラッグストアをひとまわり。
特別な予定も、目的もない。
けれど、そんな「なんでもない時間」が、いまの自分には一番ありがたい。
子どもたちが小さかった頃は、外出ひとつにも作戦が必要で、
二人でこうして歩くことなんて、ほとんどなかったように思う。
家に帰って、妻のスマホをのぞくと、
さっきの夕陽が一枚、そこにあった。
今日は月末の金曜日ということで、何かと慌ただしい一日でした。
最近は振込やカード、ペイペイなど支払い方法も多様になり、集金に伺う機会も減りましたが、それでもいくつかのお客様のところへは直接お伺いしています。
行く先は実にさまざま。お寿司屋さん、ラーメン屋さん、喫茶店、イタリアン、定食屋、バー、居酒屋、花屋さん…。
「ゴミ」という切り口で、これほど多くの業種の方々と関わっていることに、改めて驚かされます。
「駅前が賑やかになってきたね」「観光客が戻ってきたよ」
そんな何気ない会話の中に、地域の景気や人の流れが見えてくる。
帳簿の数字だけでは分からない“リアルな温度”を感じる瞬間です。
そして改めて思うのです。
振込でもカードでもペイペイでも──お金を頂くというのは、決して当たり前のことではない。
それはお客様からの信頼であり、感謝の証。
この「ありがとう」を、対面で感じられることこそが、集金という仕事の原点なのかもしれません。
そして会社として、みんなで掴み取った仕事の集大成が、この集金。
現場で汗を流したスタッフ、事務で支えてくれた社員、そしてお客様。
そのすべてが一つにつながる瞬間が、まさにこの「ありがとうございます」の時間です。
やはり、社長こそ集金に出るべきだなと、改めて感じました。
経営計画書作成合宿セミナー二日目。
講師は株式会社古田土経営(古田土会計グループ)。
経営計画書の作り方だけでなく、その“使い方”を徹底的に指導してくれる実践派。
今回の大きなテーマは「数字 × 戦略の質 × 行動の量」。
本日は戦略の質と行動の量にフォーカスした一日でした。
午前中は、弱者の戦い方として知られるランチェスター戦略をベースに、
「誰に」「何を」「どうやって」届けるのかを再定義。
改めてペルソナを設定し、なぜお客様が自社の商品を選ぶのかを掘り下げていきました。
やってみると、これまで“ニーズ”だと思っていたものが、実は自社の“シーズ(種)”であったり、
“お客様目線”のつもりが、実は自分たち都合の押し売りだったり。
気づきの多い時間となりました。
そして午後、一番心に残ったのが、アンゾフの成長マトリクスを使った「新規事業の決断」に関する講義でした。
既存市場 × 既存商品から始まり、新市場・新商品へと進む4つの方向性。
この図を、単なる“成長理論”ではなく、リスクと覚悟を見える化するツールとして解説されたのが非常に印象的でした。
講師の言葉が心に残ります。
「どこにリスクがあるかを見える化できれば、迷いではなく戦略になる。」
新市場 × 新商品、つまり“多角化”へ踏み出すとき、
人はつい夢や勢いで動きがちです。
しかし、アンゾフのマトリクスを冷静に当てはめると、
感情ではなく構造で判断できる。まさに意思決定の羅針盤です。
私はこれまで、どちらかと言えば直感で動くタイプでした。
けれど今日の学びで、直感に“理論の補助線”を引くことの大切さを実感しました。
「新しい挑戦をする」というのは、単に勇気を出すことではなく、
自社の立ち位置を見極め、進むべき方向を言語化すること。
その決断こそが、戦略の質を高める行為なのだと感じました。
数字 × 戦略の質 × 行動の量。
経営の結果をつくるこの方程式の中で、今日は「決断の質」を磨いた一日。
勢いではなく、確信をもって一歩を踏み出すための“思考の軸”を得られた、濃い二日目となりました。
先日の土曜日は、久しぶりに妻を連れて、ちょっと夜の街へ。
行き先は、当社でもごみ収集や厨房雑排水の清掃などでお世話になっている 和ビストロMARCO さん。
完全予約制、しかも看板は“表札レベル”という100%隠れ家的なお店です。普通なら気づかずに通り過ぎてしまうほどの控えめさ。そんなお店がずっと気になっていたのです。
ドアを開けると、予約で満席。カウンター越しに見える厨房では、丁寧に料理が仕上がっていきます。
舞茸の天ぷらとヤリイカのシュウマイで始まったコースは、どれも一皿一皿が印象的で、季節を感じる味わい。料理に誘われるように、日本酒が進みました。
最初は 白露垂酒(羽黒)、続いて 杉勇(遊佐)、そして 田酒(青森)。この田酒が、まぁ…旨い。
するすると喉を通り、気づけば何杯飲んだのか、自分でもわからないほど。お店の空気と妻の笑顔と日本酒の魔力。最高の夜でした。
…そして翌朝、しっかり二日酔い。
久しぶりの頭痛と、胃の奥に残るあの独特の感覚。歳を重ねると、“楽しい夜”のあとには、もれなく“静かな朝”がついてくるものです。冷たい水を一口、ふうと深呼吸。反省と幸せが同居する、不思議な時間。
「いや〜、よく飲んだね」と妻に笑われながら、少し重い頭を抱えつつ、そんな夜があるのも悪くないなと思った日曜日の朝なのでした。