きょうで、一大プロジェクトの工事が終わった。
詳細は、これから小出しにしていこうと思う。
この一年でいちばん寒い時期。
火の気のない工場での作業は、正直こたえただろうと思う。
吐く息は白く、金属は触るだけで体温を奪っていく。
指先の感覚が薄れていく中で、ボルトを締め、配線を通し、水平を取り続ける。
それはもう「仕事」という言葉では足りない、身体そのものの営みだ。
私はその昔、電気工事士として現場に出ていた。
だからなのか、今回工事に来てくれている電気屋さんのことが、どうしても気になってしまう。
盤の前に立つ姿勢。
腰袋の重さ。
工具を置く位置。
ブレーカーを落とす前の、ほんの一瞬の間。
言葉の端々に出てくる専門用語が、いちいち懐かしい。
そんな中に、ひとり、年配の職人さんの姿があった。
失礼とは思いながら、年齢を聞くと「七十六です」と静かに言う。
七十六。
正直、まったくそうは見えない。
背筋が伸びていて、動きに無駄がなく、若い職人たちと変わらない稼ぎっぷりだ。
脚立を押さえ、ケーブルをさばき、必要なときだけ口を開く。
「次は新潟の現場も頼みますね」
そう声をかけられても、彼は小さくうなずくだけ。
寡黙な職人。
その背中を見ながら、私は思った。
こういう人たちが、今の日本を支えているんだよな、と。
この人たちは、明日にはまたバラバラに、どこかの現場へ散っていく。
そう思ったとき、工事が終わった工場に、ふっと寂しさが漂った。