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918/1000 やらない勇気 

918/1000 やらない勇気 

先日、経営の勉強会で「アンゾフのマトリックス」という考え方を学んだ。

会社の成長戦略を、

①市場浸透

②商品開発

③市場開拓

④多角化

の4つに分類するというものだ。

図にするとシンプルなのだが、眺めているうちに、経営の本質が見えてくる。

私たちはつい、「新しいこと」に目が向く。

新規事業。

新サービス。

新しい市場。

経営者であればなおさらだろう。

何か面白いことはないか。

新しい収益源はないか。

そう考えること自体は悪くない。

しかし、この理論の面白いところは、「どこへ行くか」だけでなく、「どこへ行かないか」も示してくれることだ。

特に④の多角化。

新しい商品を、新しい市場へ投入する。

夢はある。

しかし同時に、最もリスクが高い。

商品も分からない。

お客様も分からない。

言ってみれば、地図もコンパスも持たずに航海へ出るようなものだ。

一方で②の商品開発や③の市場開拓は、すでに持っている強みを活かせる。

技術。

経験。

人脈。

信用。

そうした積み重ねを土台にして前へ進むことができる。

考えてみれば当たり前の話だ。

野球が得意な人が、まずは野球を伸ばす。

料理が得意な人が、まずは料理で勝負する。

それなのに会社になると、なぜか急に全く違う競技に挑戦したくなる。

アンゾフのマトリックスは、その暴走しがちな気持ちを静かに引き戻してくれる。

「あなたの強みは何ですか?」

と問いかけてくるのである。

経営の仕事は、新しいことを始めることだと思っていた。

しかし最近は少し違う気がしている。

むしろ、

「やらないことを決める」

ことの方が大切なのかもしれない。

限られた人員。

限られた時間。

限られた資金。

だからこそ、自分たちの強みが生きる場所に集中する。

遠回りに見えて、それが一番確実な成長への道なのだろう。

アンゾフのマトリックスは、事業を増やすための理論ではない。

自分たちの立ち位置を見失わないための地図なのだと思う。