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896/1000 欲望と孤独 

896/1000 欲望と孤独 

Netflixのドラマ「地獄に堕ちるわよ」を観終えた。

もともとは妻が観ていたものを、横でなんとなく眺めていただけだったのに、気づけば最後までしっかり付き合っていた。

この作品は、「大殺界」という言葉でも知られる占い師、細木数子をモデルにした物語。

自伝の執筆を依頼された作家の視点を通して、ひとりの女性の波乱に満ちた人生が描かれていく。

占いの話のようでいて、実はとても人間くさい。

観終わって残ったのは、ひとつの気づきだった。

一人の女性の葛藤と同じ構造が、立ち上がろうと必死だった日本そのものだったのではないか。

焼け野原から始まる人生。

何もないところからのスタート。

今の私たちには想像しきれないけれど、

あの時代は「ない」からこそ前に進むしかなかった。

迷っている余裕なんて、きっとなかったのだと思う。

人の痛みを知っている人は、強い。

でも同時に、とても繊細でもある。

人の気持ちが分かるからこそ寄り添える。

でも分かるからこそ、自分の中の欲望や葛藤とも向き合うことになる。

その姿は、ただの一人の女性ではなく、

どこか時代そのものの姿にも見えた。

「大殺界」という言葉も、そう。

正しいかどうかよりも、

その言葉にすがりたくなる気持ちがあったということ。

不安な時、誰かに「大丈夫」と言ってほしい。

はっきりとした答えが欲しい。

それは、あの時代を生きた人たちも、

そして今の私たちも、きっと同じだ。

戦後の時代は、優しさよりも強さが求められた。

迷わず決めること。

前に進み続けること。

それが社会を動かし、日本を立ち上がらせた。

でもその裏側には、

誰にも見せない孤独があったのだと思う。

観終わって、ふと父親世代のことを思った。

多くを語らず、ただ働き続ける背中。

あの姿の中には、きっと言葉にしない思いがたくさんあったのだろう。

あの時代を生きるというのは、

想像以上に大変で、そして静かな孤独と共にあったのかもしれない。

欲望は、悪いものではないのだと思う。

何もないところから立ち上がるためのエネルギー。

誰かを守るための力。

でもその強さは、ときに自分自身も揺さぶる。

このドラマを観て、

少しだけ、あの時代とそこに生きた人たちが近くなった気がした。