もう10年ほど前の話です。80代とおぼしきご夫婦の戸建てのお住まいに、お片付けの見積もりに伺いました。きっとモノが多くてお困りなのだろうと覚悟して伺ったのですが、中に入るとガランとして、モノはかなり少なく、神社の様な佇まい。私は前職で電気工事の仕事をしていたのですが、このお宅の契約アンペア数が15Aと知り、かなり驚かせられたことを覚えています。
ご依頼の内容は、不要物数点を処分してほしいとの事でした。ご主人が天を指さして「そろそろあっちに行かなきゃならんからな〜」と笑顔で仰います。奥様はただニコニコしておられました。
収集の日程を決め帰り際、ご主人からそうそうとガレージに案内され、これもどうしようかとご相談頂いたのが、メルセデス・ベンツ190Eの処分でした。この車、僕は名車中の名車だと思っております。設計は多分東西ドイツ時代のものだと思いますが、車が走る事をストイックに突き詰めた車だと雑誌で読み、高校生の頃から憧れていました。
当時発売から20年は経過していたと思いますが、関東に住む息子さんは興味がないし、そんな古い車要らないと言われたと少々寂しげでした。私とご主人は190Eの素晴らしさを語り合い、最終的には「そんなに好きならこの車、お前に乗ってもらいたい!」と車のキーを差し出して来られたのです。
part2に続く