メルセデス・ベンツ190E、発売当時はベンツの中で一番小さいモデルでした。しかし、契約容量15Aの慎ましい暮らしぶりと似つかわしい感は否めず、「この190Eをお前に乗ってもらいたい」と言うご主人は、いったいどんな人物なのだろうと、興味がどんどん湧いてきました。
そこから、ご主人の昔話を伺うこととなります。掻い摘んで言うと、炭鉱夫として現役時代を全うし、母親から教えられた、「安物買いの銭失いはするな」という言葉を生涯大切に生きてきたとの事。
そして190Eは、「その時、自分が出せるお金で買える最高の車だった」「安物買いの〜という母の言葉は、私のモノを選ぶ時の基準」「高いとか安いとか、偉いとか偉くないではなく、大切なモノを大切にする生き方に価値があるんだよ」と教えて頂きました。
ご依頼の仕事は後日30分程で終了しましたが、ご主人より「190Eはお前にやる」とその後何度か連絡を頂きました。憧れの車でしたし、正直かなりグラッときましたが、片付けのプロとして受け取れない旨をお伝えし、現在に至ります。
あれから10年、ご主人はもうご存命ではないかもしれません。名車190Eは結局どうなったのか…
その後、整理収納を学び、生業とする中で、ご主人がおっしゃられた「大切なモノを大切にする生き方」こそ、私たちが届ける整理収納のゴールの一つであると感じています。