977/1000 『ペリリュー』が問いかけた、リーダーの決断
先日、映画『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』を観た。
正直に言うと、最初は少し違和感があった。
あの柔らかく、どこか親しみやすい絵のタッチで戦争を描くのか、と。
ところが、物語が進むにつれて、その違和感は消えていった。
いや、あのタッチだからこそ最後まで観ることができたのだと思う。
兵士ではなく、一人の青年として彼らを見ることができる。
だからこそ、一人また一人と命が失われる重みが、静かに胸へ積み重なっていく。
映画の中で、私が最も考えさせられたのは、終戦を知らずに三十数名を率いた指揮官の姿だった。
戦争が終わったことを知らない。
昨日まで正しいとされていたことが、本当に今日も正しいのか分からない。
志を貫くべきか。
命を優先すべきか。
その決断を、自分一人ではなく、多くの命を預かる立場で下さなければならない。
その姿を見ていて、不思議と中小企業の社長の姿が重なった。
経営もまた、前提が変わる。
景気が変わる。
法律が変わる。
人口が変わる。
技術が変わる。
昨日まで成功していたやり方が、今日は通用しないこともある。
そんなとき、過去のやり方に固執するのか、それとも変える勇気を持つのか。
経営者は常にその問いを突きつけられている。
だから私は思う。
会社とは、不易を定め、不易を守るために易を変え続けるものなのだ。
変えてはいけないものは、理念であり、存在意義であり、「何のために会社があるのか」という目的だ。
しかし、その目的を実現する方法は、時代に合わせて変えていかなければならない。
終戦という一つの出来事で、それまでの価値観は大きく変わった。
昨日まで「最後まで戦うこと」が正義だったものが、「生きて帰ること」が正義になる。
前提が変われば、手段も変えなければならない。
それでも、守るべきものは何だったのか。
その問いは、戦場だけのものではない。
企業も同じだ。
目的は変えない。
手段は変える。
その見極めこそが、経営者の仕事なのだと思う。
『ペリリュー』は戦争映画だった。
しかし私には、リーダーとは何かを問いかける映画でもあった。
変える勇気。
変えない覚悟。
その両方を持ち続けること。
それは戦場だけではない。
今、この時代を生きる私たち経営者にも、毎日のように問われていることなのだと思う。

