今年は暖冬ということで、スキー場に雪がないなど困ったことも様々あるようです。冬といえば私にとって忘れられないエピソードがあります。それは高校一年生の冬休みのこと、今から30年前の話です。その時私はどうしてもエレキギターが欲しくって、よしバイトをして買おう!と思い立ち近所の土建屋さんに飛び込みでお願いに行ったことがありました。
「じゃあ明日から来い」なんて言われて雨具を持って翌朝伺うとトラックに乗せられて着いた現場が海岸でした。真冬の寒風吹き付ける日本海、立っているのもやっとでした。そこには、砂浜を守るように設置されている大きな八の字型のブロックがあり、その穴の空いた部分に岩を詰めるというのが私の仕事でした。この仕事に一週間従事したのですが、一日がこれほど長いと感じたのは後にも先にもこの時以外にはなかったと思います。
ラグビーボールほどの岩を一個一個その穴に詰めて行くのですが、作業していると強風で雨具がめくれて上着がビショビショになり手も足もカッチコチ。働くって大変なんだな〜なんて実感していました。その時、一緒に働いていた女性がいました。当時の私からするとおばあさんに見えたのですが、たぶん60代ぐらいでぷっくりした女性でした。
初日、雨具を旗みたいに風にバタバタさせてカッチコチで働いている私。そんな私を見かねてその女性はロープを持ってきて雨具をバタつかないよう縛ってくれました。またはあったかいコーヒーを持ってきてくれたり、夕方には雨具が脱げないぐらいカッチコチになっていましたので雨具を脱がせてくれたり、本当にありがたかったです。
もう顔も名前も覚えていませんし、もしかしたら亡くなっているかもしれません。でも私は彼女から働くということに必要な賢さや、なんというかそれを乗り越えるズルさのようなものを教えて頂いたように思います。
二日目からは彼女のアドバイス通りの服装をし、その日を乗り越えられる上手な立ち居振る舞いをしてなんとかその一週間を過ごしました。本当にありがたくって、雨具をロープで結んでもらった時の女性のぷっくりした体の優しいような力強いような感触を今でも覚えています。
たったそれだけ、一週間だけの繋がりでしたが人ってありがたいな、誰かの力になるって素晴らしいな。そんな事が感じられる冬の忘れられないエピソードです。俺も誰かの力になろう!