会場は〈飛天〉。フジテレビの音楽特番「FNS歌謡祭」などが開催される、まさに“テレビで見たあの場所”です。
初めて足を踏み入れた私は、その天井の高さとシャンデリアの輝きに圧倒されました。ステージの先に広がる空間は、画面越しよりはるかに大きく、そして荘厳。全国から1,500名を超える仲間が一堂に会し、45周年を祝う場としてふさわしい空気に満ちていました。
特別記念公演では、武蔵野大学教育学部教授の貝塚茂樹先生が登壇。「戦後80年と道徳・家族・国家」という壮大なテーマについて語られました。
冒頭で紹介された戦中派・吉田満の問いかけ――「もし豊かな自由と平和、それを支える繁栄と成長力が、自己の利益中心に費やされるならば、それは不幸である」という言葉が強く心に残ります。豊かさの裏に潜む“空洞化”への警鐘が、時代を越えて響いてきました。
続いて語られた「戦後80年の歴史」は、①敗戦と戦後改革、②高度経済成長と国民意識の変化、③冷戦後からAI時代までの3つに区分されました。共同体の解体と個人化、そして現代における「つながりの不明瞭化」。その流れを追っていくと、私たちが直面している課題が浮かび上がります。
そして特に興味深かったのが「ゴジラ」の話。
なぜゴジラは日本にだけ上陸するのか。なぜ皇居には決して手を出さず、破壊の途中でターンを繰り返すのか。そこには単なる怪獣映画を超えた「戦争へのアンチテーゼ」が込められているのだと先生は語られました。戦死者の亡霊を背負った存在としてのゴジラ。スクリーンの中の咆哮が、戦後日本の記憶と痛みを象徴していると考えると、子どもの頃に観た映画が全く違う意味を帯びて迫ってきます。
さらに心に残ったのは、次の言葉です。
「私のものさしで問うのではなく、私のものさしを問う」
「自分とは何か?ではなく、何が自分なのかを問う」
自分の価値観を振りかざすのではなく、その価値観自体を見直すこと。自分を一つの定義で語るのではなく、何が自分を形づくっているのかを問うこと。こうした新しい視点に触れることができたのは、この記念の場ならではの学びでした。
1,500名の熱気に包まれながら、私は改めて決意しました。
自分の中の「ものさし」を問い直し、日々の小さな選択の一つひとつに、その気づきを重ねて生きていこう。
なお、「飛天」のあるグランドプリンスホテル新高輪は、2026年度中に営業を終了する予定です。JR品川駅前の再開発計画の一環で、解体後は複合ビルが建設されるとのこと。
だからこそ、今日この場に立てたことは、まさに一期一会の体験であり、歴史の節目に立ち会えた貴重な時間だったと強く感じます。