太宰治著「魔術」を読むと、欲に絡め取られて行く主人公の心の変化に「うん、うん、そうなる、そうなる!」と共感してしまいます。このお話、インド人魔術師のマティラム・ミスラ氏より魔術を教わるというものなのですが、この魔術「欲を出してしまうと失われてしまう」という性質を持っています。主人公は「私には欲は無いつもりだ」とミスラ氏よりこれを伝授されるのですが、友人からの誘惑を断れず禁断の賭けにその魔術を使ってしまい、最後には欲の虜となるという、なんともスリリングで示唆に富むお話です。
「欲」っていうのは、魔物なのでしょうか。一度ギアが入ってしまうと中々外れない、痛い目を見るまで辞められない。どんな人にもそんな経験があるのでは無いでしょうか。
「欲」と似た存在に「夢」があると思います。そしてこの二つは表裏一体の存在とも言えるのかもしれません。
「皆んなの為に!」と苦労して政治家になった方が、出世後新幹線移動の際に一般客車に案内され「『なぜグリーン車で無いのかっ!』と声を荒げた自分に驚いた。」という話を聞いた事があります。
「欲」なのか「夢」なのか調子がいい時ほどこれがわからなくなってしまいます。この政治家の方は、自分の欲に気がついたから驚いたのでしょう。「欲」って言うのはつまりは「自己満足の為に行う事」なのだと思います。そして私が考える夢とは、他者の幸せを通じて自分が幸せになる事。だから夢と欲はやっぱり違う。
と言う事で、「欲」なのか「夢」なのか、それをはっきり分けて捉える事で「思い通りの人生は切り開かれる」これが今の所の私の答えです。