社長になって今月で丸10年。
新社屋への引越し、コロナ禍、ベテラン社員たちの定年退職、そして新しい世代の入社。
振り返れば、変化の連続だった。
今、私はその過渡期のど真ん中にいる。
次の世代へバトンを渡す準備もしなければならない。
同時に、その次の未来に向けて新しい手も打たなければならない。
この一年は、おそらくこの10年の総仕上げとなる一年だ。
10年なんとかやって来て
希望のある人生、希望のある会社をつくるのが社長の仕事なのだと思う。
世の中には不安も課題もたくさんある。
それでも、「明日は今日より少し良くなるかもしれない」と思える会社でありたい。
社員がそう思えれば、お客様にも地域にも、その希望は伝わっていく。
10年目の交差点。
どんなことがあっても希望を掲げて行こう。
私は掃除はあまり好きではないが、整理は好きだ。
お片づけのプロとして言わせてもらうと、収納用品は最後の最後に考えるもの。
まず目的を決める。
次に物を減らす。
使う頻度や使う場面を考え、
そして定位置を決める。
収納用品はその後だ。
だから私は自宅では収納グッズをほとんど買わない。妻が買ってきて使わなくなった収納用品を再利用することが多いからだ。
ところが今回、珍しく収納グッズを買った。
セリアのクリアトレーを二つ。
合計200円である。
収納するのは時計の替えバンドと専用工具、それにクロスやちょっとした小物たち。
これまでも収納はできていた。しかし、妻のお下がりの収納用品だと、形も色も素材もまちまちで、どこか間に合わせ感がある。
機能的には何の問題もない。
けれど、眺めた時の気分が違うのだ。
透明なトレーを二つ重ねただけなのに、工具はここ、クロスはここ、替えバンドはここ、と景色が整う。
なんだかんだ言っても収納用品にはやはりワクワクさせられる。
たった200円。
高価な買い物ではない。
しかし、こういう小さな満足感は案外大きい。
人の気分というのは面白いもので、たった200円で上がってしまうのである。
先日、経営の勉強会で「アンゾフのマトリックス」という考え方を学んだ。
会社の成長戦略を、
①市場浸透
②商品開発
③市場開拓
④多角化
の4つに分類するというものだ。
図にするとシンプルなのだが、眺めているうちに、経営の本質が見えてくる。
私たちはつい、「新しいこと」に目が向く。
新規事業。
新サービス。
新しい市場。
経営者であればなおさらだろう。
何か面白いことはないか。
新しい収益源はないか。
そう考えること自体は悪くない。
しかし、この理論の面白いところは、「どこへ行くか」だけでなく、「どこへ行かないか」も示してくれることだ。
特に④の多角化。
新しい商品を、新しい市場へ投入する。
夢はある。
しかし同時に、最もリスクが高い。
商品も分からない。
お客様も分からない。
言ってみれば、地図もコンパスも持たずに航海へ出るようなものだ。
一方で②の商品開発や③の市場開拓は、すでに持っている強みを活かせる。
技術。
経験。
人脈。
信用。
そうした積み重ねを土台にして前へ進むことができる。
考えてみれば当たり前の話だ。
野球が得意な人が、まずは野球を伸ばす。
料理が得意な人が、まずは料理で勝負する。
それなのに会社になると、なぜか急に全く違う競技に挑戦したくなる。
アンゾフのマトリックスは、その暴走しがちな気持ちを静かに引き戻してくれる。
「あなたの強みは何ですか?」
と問いかけてくるのである。
経営の仕事は、新しいことを始めることだと思っていた。
しかし最近は少し違う気がしている。
むしろ、
「やらないことを決める」
ことの方が大切なのかもしれない。
限られた人員。
限られた時間。
限られた資金。
だからこそ、自分たちの強みが生きる場所に集中する。
遠回りに見えて、それが一番確実な成長への道なのだろう。
アンゾフのマトリックスは、事業を増やすための理論ではない。
自分たちの立ち位置を見失わないための地図なのだと思う。
先日、42歳頃の立川談志による「へっつい幽霊」を聴いた。
やはり名演だった。
私が生まれた頃の古い録音にもかかわらず、ぐいぐいと引き込まれる。
今回、私が思わず反応したのは「へっつい」の処分に困る場面だった。
へっついとは昔のかまどのことだが、このへっついには幽霊が付いている。
そのせいで誰も欲しがらない。街に悪い噂が流れる。
売ろうとしても売れない。
むしろ、お金を付けてでも持っていってほしいという話になる。
そこでふと思った。
「あれ、これ私たちの仕事だな」と。
「へっつい幽霊」を聴きながら、笑っていたはずなのに、いつの間にか仕事のことを考えていた。
昨シーズンは、熱中症対策用の塩分タブレットが手に入らず苦労した。
必要になってから注文しても在庫がない。あっても納期がかかる。あちこち探し回って最後はスーパーの袋飴になっていた記憶がある。
そんな経験があったので、今年はまだ肌寒さの残る3月のうちに一年分を購入しておいた。
たかがタブレットである。
しかし社員みんなの分となると話は別だ。段ボールで届いたそれは思いのほか場所を取り、金額も数万円になる。
積み上げられた箱を見ながら、「これ全部食べるのか」と少し笑ってしまった。
そして、もう一つ気になることがある。
こんなに食べて虫歯にならないのだろうか。
熱中症を防ぐために配ったのに、今度は歯医者さんのお世話になる人が増えたら本末転倒である。
もっとも、それは冗談半分の心配だ。
本当に怖いのは熱中症の方である。
今日、事務所では今シーズン初めて冷房を入れた。
そして、3月に買った塩分タブレットがやっと日の目をみた。
昨年は社員の熱中症がゼロだった。
もちろん今年もゼロを目指す。
熱中症対策に特効薬はない。こまめな水分補給や休憩、声掛け、そしてこうした地味な備えの積み重ねだと思う。
できることは先にやっておく。
そうゆうことだ。