2ヶ月に一度、顔剃りに床屋さんへ行っている。言っておくが、ただの顔剃りではない。90分。もはやコース料理並みの贅沢時間だ。最初の頃は「そんなに時間かかる!?」と思ったけれど、今ではこの90分がないと生きていけない身体になっている。完全に中毒。
椅子に座った瞬間、もう半分眠い。背もたれが倒れて、顔に蒸しタオルがのせられたら、はい終了。完全に宇宙へトリップである。天井の照明がぼんやり見えて「ああ、これが極楽ってやつか…」なんて思ってるうちに、いつの間にか顔がつるっつるになってる。
最近見た会員制の高級理髪店の写真が忘れられない。革張りの立派な椅子、静かな照明、木目の壁。完全に大人の秘密基地だ。もちろん行ったことはない。でも、妄想なら何度も行ってる。あの椅子——名前は「バーバーチェア」というらしい——あれに座るだけで、自分がちょっとデキる男になった気がするから不思議だ。
できればその部屋には、でっかいスピーカーも置きたい。アナログのレコードをかけて、針が落ちる音にうっとりするようなやつ。「音が空気を震わせる」ってこういうことか〜なんて言いながら、たぶんコーヒーか何かを飲む。でも気づけば、スピーカーより先に買ったのはレコードだけ、なんてこともありそうで怖い。あと、置く場所ね。スピーカーって本当に、でかい。
本当はあんな空間、自宅にもほしい。でも、あのアンティークな雰囲気って、どう頑張っても一朝一夕では出せないんだよなあ。うちのリビングにあの椅子とスピーカーだけ置いても、たぶん浮く。完全に浮く。まるで、おしゃれなスーツをパジャマの上に羽織ってるみたいな感じ。