ツバメが、今年もやって来ました。
当社事務所の2階テラスにある、昨年の巣にそのまま戻ってきたようです。賑やかな鳴き声と小さな羽音とともに、何ごともなかったように巣に入り、子育ての準備を始める姿を見ていると、季節の巡りが確かに訪れたことを実感します。変わらぬ営みに、心がすっと整うような気がするのです。
今日、我々のパートナー富樫あい子さんが営む町家カフェ「古今cocon」が新たな節目を迎えました。
築150年の趣あるその町家で、これまでのカフェ営業に加え、日用雑貨と古道具の販売がスタートしたのです。
あい子さんは、この町家がある山王町で5年間温かくおもてなしをしてきた方。そんな彼女の手によって息を吹き返した町家に、私たちが家財整理の仕事を通して出会った古道具たちを、少しずつ卸しています。
家財整理とは、誰かの暮らしの記憶を丁寧に受け取り、未来へつなげていく仕事だと思っています。使い込まれた器、手になじんだ籠、時の流れが刻まれた木の小物。どれも、手放されてもなお、誰かの暮らしのなかで息をし続けたいと願っているように見えるのです。
そんな品々が、あい子さんの店の一角に静かに並び始めました。
ふらりと立ち寄ったお客さまが、「これ、母が使っていたのとそっくり」と手に取ってくださる姿を見かけると、過去と現在が、確かにつながっていることを感じます。
あのツバメのように、かつての巣をまた使うように。モノもまた、場所を変えて誰かの手で新たな時を刻んでいく。
私の仕事は、ただ整理することではなく、そうした循環をそっと手助けすることなのかもしれません。
日々の暮らしの中に、少しだけ立ち止まる時間が生まれる場所。
町家カフェの片隅で、そんな出会いを見届けていけたらと思っています。
古今さんのインスタはこちらから
https://www.instagram.com/cocon.tsuruoka?igsh=YXp6ZGNkNmZyN21x