能楽などで使用する小鼓に張ってある皮は、毎日使用していると50年程すると最も良い音が出せる様になります。なんとも気の遠くなるお話ですが、このように長い年月の中で熟成された皮は、なんと500年もの間使用する事ができるのだそうです。
ただ、数ヶ月で良い音を出すための裏技も存在します。しかしこうやって使用した小鼓は、たった数年で皮がヘタって使い物にならなくなってしまいます。これはなんだか現在の便利さと環境問題等のジレンマとも似ていますね。
また、これを人間の一生に当てはめると、20歳で肉体的なピークを迎える私たちですが、人間としての円熟味は50代以降に生まれてくるのかもしれないとも考える事ができました。現に能では、理想的な本当の声が出せる様になるには体が硬くなった状態、つまりかなりの歳を重ねる必要があると言われ、歌舞伎では10代の役を80代が演じる事は珍しくなく、それはそれは素晴らしい舞台となると聞いた事があります。
こんな事を知ると、中年の私にとってはとっても希望が持てる話で、【できるだけ若くありたいとする気持ち+歳を重ねることで増して行く魅力】は人生100年時代を生きる私たちに輝きを与えてくれる重要な要素なのだろうとも思いました。
肉体的なピークを過ぎ、歳を取るのが怖いと少し感じていた時期もありましたが、前向きに楽しみにして行こう!そんな気持ちになれる小鼓の皮のお話でした。