昨日の寒さが嘘のように、今日はじんわり汗ばむ暑さ。ここ鶴岡も、季節がぐっと前に進んだ気がします。
そんな中、行政の方々や工業団地の代表と、軽く打ち合わせの時間がありました。テーマは地域の課題。特に、若者の流出をどう防ぐかという話は、皆さんそれぞれに思いがあるようで、自然と議論も深まりました。
「こんなネットワークが必要なんじゃないか」 「若い人たちが集まれるような拠点があったら」 「もう少し情報発信を強化してはどうか」
いろんな「足す」アイディアが出てきて、それはそれでとても前向きだと思います。地域をよくしたいという気持ちが伝わってきて、聞いていてうれしくなりました。
でもその中で、僕はひそかにこう思っていました。
「何かを加える前に、いったん引いてみる必要があるんじゃないか」と。
私たちが日々お伝えしている整理収納アドバイザーの理論でも、まず最初にやるのは“整理”、つまり「不必要なモノを取り除く」ことです。そしてその前には、「どうしたいのか」というビジョンを描く。これがあるからこそ、“今”を見直すことができるんです。
この流れで、ふと昔の友人の言葉を思い出しました。
「ラーメンの味も確かめないで、いきなり胡椒を振るやつって、ちょっと野暮だよな」
彼はそう言って、まずは一口、真剣にスープを味わってから箸を進めるタイプでした。たしかに、“味見もせずに足す”のは、自分の感覚を信じてないことの裏返しかもしれない。地域も同じで、「足さなきゃ」と焦る前に、まず今の味を確かめてみる。その方がずっと豊かだし、誠実だと思うのです。
もちろん、答えなんて簡単には出ません。でもこうした対話の場そのものが、地域を整理していくための大切なプロセスなのだと感じました。
帰り道、暑さに背中を押されて、アイスコーヒーをひとつ。苦味の中に少しだけ甘さを感じながら、「やっぱり足すより引く、かもしれないな」と、考え続けていたのでした。